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「く」から始まる後悔

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みなさんこんにちは。

 

NJ編集部の餃子です。

 

 

 

みなさんは「私なんでこんなことしちゃったんだろう?」と思う経験はありませんか?

 

私にはあります。

 

 

 

 

それは私が小学校に上がって間もない頃、少女だった餃子がいつものように下校後に学校の近くに住んでいる友人(仮に、この友人のことをAと呼ぶことにしよう)と遊んでいたときのことだった———。

 

 

その日は友人Aと「釣ったザリガニの胴体を分解し、それをエサにして再びザリガニを捕らえる」という神々の遊びで生きとし生ける生命の尊さを学ぶことに夢中だった。

思いっきり地獄の遊びを堪能していると日が暮れてしまい、そろろろ帰ろうかと思案していたときにその事件は起こった。

 

 

「ねえ、落書きしようよ」

 

 

唐突に降ってきたその声に顔を上げると、友人Aのお姉さんが仁王立ちで私を見下ろしていた。

私はまだ純粋だった眼差しを向けてA姉に問う。

 

 

 

「どこにするの?」

 

 

「そこ」

 

 

 

ニィ、と人の悪い笑みを浮かべてA姉が指差したのは、友人Bの家の塀だった。

 

餃子少女は動揺した。A姉がどうしてそんなことを言うのか皆目見当も付かなかったのだ。

 

 

 

「え、でも……。Bちゃんちだよ?」

 

 

 

友人Bは良い子だった。純真無垢な性格、女の子らしい服装、ハーフのような相貌。女子からも好かれていた彼女は、学年中の小学生男子の憧れの的だった。無論、私もBちゃんのことが大好きだった。

 

 

 

「いいからやれって!」

 

 

 

姉Aはそう言って私に油性マジックを手渡した。「4歳年上」というのは、小学生低学年からすると大人の創造以上に脅威なのだ。彼女の怒気に圧倒され、私はおずおずとマジックの蓋を外した。

姉Aに気付かれないように友人Aを盗み見ると、Bと仲が良かった彼女も動揺と恐怖の間で揺れていた。

 

もう、逆らえない。

 

 

 

「早く書けよ!大人に見つかるだろ」

 

 

 

Bちゃんごめん。本当にごめん。Bちゃんのこと大好きだけど、今は自分の身のほうが大切なんだ。死ぬほど申し訳ないけれど、書かせていただきます。そうだ、あとで土下座しよう。土下座して許してくれるかは分からないけれど、本気で床に頭を擦りつけながら謝れば優しいBちゃんならきっと許してくれるはずだ。あ、ヤバい、情けなくて怖くておしっこ漏れそう。

そんな自己中心的な淡い希望を抱きながら、壁にそっとマジックの太筆を添えた。

 

 

 

 

 

———書けない。

 

 

私は書けなかった。

 

 

 

しかし、書けなかったのは「罪悪感で」「姉Aの暴君ぶりに打ち勝った」「正義の心が芽生えた」などというもっともらしい理由ではなかった。むしろ、そうであって欲しかった。

 

 

 

「何やってんだよ!書けって!!」

 

 

 

姉Aの苛立った声に足がすくむ。

 

書け。書くんだ。何でもいいから。早く。

 

 

 

それでも、私の手は動かなかった。

 

 

 

 

———書きたくないからではない。

 

 

こともあろうに、“書くことが思い浮かばなかった”のだ。

 

 

 

 

 

早く書かなければ。早く、早く何でもいいから書かなければ殺される。この姉Aは、学校で「ちょっと情緒不安定過ぎて何するか分かんないとこあるよねマジウケピー」とウワサで聞いたことがあったのだ。焦りが募る。怖い。このまま書けなかったら、そんなことはないとは思うけれど、でももしかしたら本当に殺されちゃうかもしれない。怖い。早く書かなきゃ。頼む、動け、私の手……!!

 

 

そんな強い思いに反応したのか、私の手はそれまでの苦悩とは無縁だったかのようにひとりでに動き出した。それはまるで鶴が弧を描いて空を舞うかのように美しく、滑らかな動きだった。

 

 

 

ああ、やっとこの地獄から開放される…………。

ごめんBちゃん。本当にごめん。大人になったら絶対にこの塀の修理代払うから。約束する。悪に負けてしまって本当に情けない。今私は心に決めた。もっと強い人間になろう。こんな年上にも屈せず、たとえ自分が傷ついてでも胸を張って弱い立場の人を守れるような、そんな大人に———。

 

 

 

「ヤバい!大人が来た!!」

 

 

 

姉Aの叫び声で、現実から離れようとしていた意識がハッと戻って来る。

 

目の前には、黒の油性マジックで申し訳程度に書かれた小指サイズの「く」の文字があった。

 

 

 

 

何で「く」書いちゃったの?

 

せめて何か他にもっと書くことなかったの??????

 

 

 

「夜露死苦」とか「餃子参上」とか「ごめんなさい」とかさ。何かもっと他にあったでしょ、ね?

 

何で小指サイズの「く」???

 

 

どういう思考の結果そうなったのかは不明だが、私の人生最初で最後の人の家の塀への落書きは「く」だった。

それはともかく、その後こっぴどく親とBちゃんのご両親から叱られたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

というような一連の話を十数年間1人で抱えてモヤモヤしていたので、思い切って仲の良い同僚にことの経緯を伝えてみたものの「餃子先輩ウケる」と一笑されてしまったワケですが、もっとツラいのは私にはそういう他愛もない話を気軽にできる友人や同僚が1人もいないため、今の同僚とのくだりが完全に私の作り話であるという点にあります。

 

このままではノーマ・ジーン3月号をエサにザリガニを釣りはじめてしまいそうなので、誰か友だちになってください。

 

 

 

アディオス。(餃子より愛を込めて)

 

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